ガール・ポップが好きならキライな人はいないんじゃないかと思うトレイシー・ウルマンの「Breakaway」。
トレイシー・バージョンの元になったアーマ・トーマス・バージョンはチェックしていても、
作者であるジャッキー・ディシャノンが歌っているオリジナルを聴いたことある人はそう多くないんじゃないかな。
「Breakaway」はジャッキーの代表曲でもないから、ベスト盤に収録されることもほとんどないし。
それに、トレイシー・アレンジの雰囲気をイメージして聴いちゃうと、全然違うので「あれっ?」と思うかもしれないね。
その大きな要因は、トレイシー版で印象的なあの「ジャッ、ジャッ、ジャッ!」
というイントロがジャッキーのオリジナル版にはないことです。
今となっては「Breakaway」をカバーしてる人はたくさんいるけれど、
やっぱりトレイシー・ウルマン版は強烈。この曲を別のものにしたと思います。
とは言うものの、ジャッキーの「Breakaway」もわたしは好き。軽快なピアノやホーンが入っていて、
明るくハスキーな彼女のボーカルが楽しめます。ジャッキーはこの曲を正式にリリースしていないのだそう。
ジャッキーのアルバム「Breakin' It Up On The Beatles Tour!」
の英文ライナーによると、
デモを録ったのが'63年10月で、その年の12月にアーマ・トーマスがシングル・リリースしていると書いてあって、
そう、このアーマ・トーマスのアレンジが、のちのトレイシー・アレンジの元となったものなのです。
イントロの印象的なリフ、途中のブレイク部分など、アーマ・トーマスのバージョンでアレンジされており、
その構成やアレンジを元に、プロデューサーのピーター・コリンズが'80'sエレポップ・アレンジでカラフルにキラキラと蘇らせました。
アーマ・トーマスの「Breakaway」リリース後、'65年にブリット・シンガーのベリル・マースデンがカバーします。
ベリル版収録のコンピ「Dream Babes Vol.1 Am I Dreaming?」(イギリスのガールシンガーばかり集めたコンピ。Vol.6まである)のライナーで、セイント・エティエンヌのボブ・スタンレーは、
「ベリル・マースデンのアレンジで'83年にヒットしたトレイシー・ウルマンの"Breakaway"〜」と書いているのだけど、
聴き比べてみれば、ベリル版は、明らかにアーマのアレンジをそのまんま踏襲しているのがわかるので、違うんじゃないかと思います。
(ちなみにベルル版のアレンジャー、アイバー・レイモンドは、ダスティ・スプリングフィールド「I Ony Wannn Be With You」の作者)
ボブ・スタンレーが「トレイシーの元ネタはベリル」だと主張するのは、トレイシーとベリルは同じイギリス人なので、グレイト・ブリテンのコケンにかけて、
「 Breakaway」をブリット・ガールの脈略にしたいからなんじゃないかと思ったりもして(笑)。
てのは冗談だけど、「Dream Babes」をリリースしているRPMはイギリスのレーベルだから、考えられなくもないかもね。なんちて。
とまあ、グダグダ書いてきたけれど、所詮どうでもいいことです。トレイシーの「Breakaway」は素晴らしい。
アレンジにとてもマッチしたトレイシーの声がなんといってもいいし、イントロを聴いたとたん、
ココロが躍りカラダがリズムをとってしまう、音楽のマジックは変わらないのだから。